2016年上半期、芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの「コンビニ人間」。
受賞したときは単行本になっておらず、掲載されていた小説誌をamazonで探してはみたものの在庫切れ。読みたいけど読めない状況でしたが、ついに単行本として発売!
amazonでの発売日は7月27日でしたが、各書店のTwitterをみると「入荷しました!」との報告が。26日には店頭に並ぶような雰囲気だったので、行ってみるとありました。
150ページほどの量で読みやすく、強烈なキャラクターと独特な世界感に惹き込まれ、瞬く間に読了。コンビニをテーマに、これほど心動かされることも珍しい。
個人的には、過去に芥川賞を受賞した作品である「火花」「異類婚姻譚」よりも好き。
面白かったので、感想を交えつつコンビニ人間について紹介します。(ネタバレ含む)
あらすじ 内容紹介
古倉恵子36歳女性、未婚。
ちょっと変わった思考の持ち主。例えば幼稚園のころ、公園で死んでいた小鳥に対して悲しむことはなく、「焼いて食べよう」と言うような、大人をざわつかせるような子どもだった。
両親に迷惑をかけているのは自覚しているので、必要なこと以外喋らない。そんな恵子が大学生の時、興味本位でコンビニのアルバイトを始める。そのまま月日が流れ卒業。就職せず、コンビニで働き18年が経過。
周囲からの「就職は? 結婚は?」という質問には予め用意していた答えを返し、コンビニで働く日々を過ごす。
ある日、新入り男性バイトの白羽と出会うことをきっかけに、恵子は変化を求めるようになる。
感想
人間じゃない、コンビニ店員という生き物
恵子は人間とコンビニ店員を別の生き物として捉えている。
これから、私たちは「店員」という、コンビニのための存在になるのだ。
いろいろな人が、同じ制服を着て、均一な「店員」という生き物に作り直されていくのが面白かった。
あのコンビニエンスストアで、全員が『店員』という架空の生き物を演じているのと同じですよ
最も衝撃的だったのがラスト3ページにあった次の台詞。
気が付いたんです。私は人間である以上にコンビニ店員なんです。
人間としていびつでも、たとえ食べていけなくてのたれ死んでも、そのことから逃れられないんです。私の細胞全部が、コンビニのために存在しているんです
逆の「○○である以上に人間です」といった主張はよく聞く話。だから衝撃だった。
コンビニ人間というタイトル
働くときはコンビニ店員。
同窓生や家族と接するときは人間。
でも、働いていない状態の時にコンビニのことを考えていたから、それはもうコンビニ店員なんじゃないかな? 恵子の中で入り混じっているのだろう思った。だからこの本のタイトルは「コンビニ人間」なのかなーと。
いい終わり方
恵子は周囲の影響から、普通になろうと変化を求めた。男と同棲をし、就職するためバイトすら辞めてしまった。
でも彼女は最後、人間であることよりもコンビニ店員であることを選んだ。
クズな男との同棲生活は破滅への道にしか見えなかったので、いい選択だったと思いたい。
著者の村田沙耶香さん
著者の村田沙耶香さんは現役のコンビニ店員とのこと。受賞後のインタビューが記事になっていたので読みました。中でも次のコメントが印象的。
「コンビニという場所は、小さい頃から不器用だった自分が初めて何かをまともに出来たところで、聖域です」
たしかに、作中にも「光に満ちた箱」とう表現があった。この物語、村田沙耶香さんの実体験も混じっているのかなーと想像が膨らみますね。
※追記
村田沙耶香さんがコンビニへ宛てて書いたラブレター作品「コンビニエンスストア様」を読みました。以下のページで内容紹介や感想を書いているので、コンビニ人間が面白いと思った方は是非お読みください!

表紙のデザイン
単行本の表紙に描かれているのは、金氏徹平さんの作品「Tower」の原画。
youtubeには動画がありましたよ!
おわりに
村田沙耶香さんの作品を読むのは初めてでしたが、読んでてとても面白かった。読み終えた方がどんな感想を抱いたのかも気になります。
約150ページで読みやすかったので、あまり本を読まない人にもおすすめ! 話題作なので手に取ってみてはいかがでしょうか。
▼惜しくも芥川賞を逃した候補作はこちらでチェック!
https://output-log.com/2016/07/19/akutagawa2016/