先日、ヘッドフォン・ガールという小説を読みました。
○○ガールといえば、水族館ガールや書店ガール、校閲ガールなどのお仕事小説を連想してしまいます。その流れで、この本はヘッドフォンに関するお仕事小説なのか?と思っていましたが・・・違いました。
ヘッドフォンを作るお仕事小説ではありませんが、本書のテーマは音楽。
著者である高橋健太郎さんは音楽評論家であり、サウンドエンジニアでもある。そんな音楽の専門家による小説を、ど素人の僕が読んでも楽しめたので、感想を書いて紹介したいと思います。
なお、ネタバレを含む箇所があるのでお気をつけください。
あらすじ
舞台は2000年。いまだVHSが活躍する時代。
行方不明になった伯母を探すことになったカズマ。手がかりがないかと伯母の家へと向かい、映写機を見つける。点けてみると・・・突然未来へとタイムスリップ。
場面は変わって地下鉄の車内。意識だけが飛び、知らない女性の視点で世界を見ていた。カズマは未来の光景が気になりタイムスリップを繰り返す。
ヘッドフォン・ガールでは、もう一人の主な語り手がいる。リキという名で女性である。リキはヴァイオリン奏者として仕事をしているが、色々と思うところはあるようだ。
一見関係なさそうな2人の視点で、物語は進む。
ヘッドフォン・ガールの感想
音楽に精通した人による、初めての小説。正直言うと、読点が多く冒頭は読み辛いなと思っていた。だけど読み進めていくと、そんなことは気にならなくなる。
タイムスリップの謎やカズマとリキの動向が気になるからだ。
ヘッドフォン・ガールには数多くのキャラクターが登場。交わることもなさそうだった人間関係が音楽を通して繋がっていくところは高揚感が増し、興奮気味に読めた。
最後までストーリーを楽しみ、残った感情は切ない気持ち。まさにこれからどうなるのか?というところだったのに…。
リボンマイクの修理を頼みに行く時どんな会話をするんだろうとか、京都旅行はどうなるのかとか、気になることはいっぱいあった。それなのに…それなのに別れは突然で…。ただただ切ない…。
この切ない感じと、へびつかいさんによる表紙イラストが、とてもマッチしているように思えた。
ヘッドフォン・ガールというタイトル
作中で「ヘッドフォン・ガール」という言葉が登場したのは一度だけ。リキが電車移動をする際、ヘッドフォンで音楽を聴いているから、そのように表現されていた。
ですが、終盤こんなセリフがありました。
音楽の中では、生きている者と死んでしまった者の区別はないんだよ
リキは録音のための演奏前、この言葉を思い出すことで心を落ち着かせることができた。そして、音楽をより感じられるようにヘッドフォンをして演奏した。
楽しむ目的で音楽を聞くためだけではなく、亡くなった人を感じながら演奏するためにヘッドフォンをする。
ヘッドフォンを装着するという行為は同じでも、込められた意味が違ってくるのかなと。そんな感じの意味がタイトルに込められているのかなーと、ふと思った。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
この本は音楽に疎くても大丈夫! ミステリーやSFの要素もある音楽小説なので、気になった方は是非読んでみてください!
それでは、また。