「君の膵臓をたべたい」の衝撃から1年半。
「また、同じ夢を見ていた」の感動から10か月。
2016年12月、ついに住野よるさんの新刊が発売されました!
本のタイトルは「よるのばけもの」。
発売日は全国的に12月9日とされていましたが、都内の本屋では最速で12月6日の午後から書店にて並んでいました。その日の帰り道、淡い期待をもって本屋さんを訪れてみると・・・ありました! 本屋さんにばけものがいたんです!
すでにAmazonで予約してるけど、今すぐ読みたいからそんなの関係ない! そんな想いが強く、早速購入。帰宅後、夢中になって読み進め、あっという間に読了。
それでは、「よるのばけもの」について、まずはネタバレなしで紹介します。後半はネタバレを含む感想や考察があるので、未読の方は進まないようお気をつけください。
美しき黒と白のデザイン
loundrawさんによる表紙
まずは表紙から!
発売前にツイッターでこの表紙を見たとき大興奮!!
右側にいるのは作品のタイトルにもなっているであろう夜の化物の姿が。そして左側には化物を見上げる少女がいます。黒と白、アクセントに赤を用いたデザインに見惚れてしまいました…!
広げてみるとこんな感じ。
裏側には少年の姿がありました。
このクソかっこいい表紙を手がけたのはイラストレーターであり漫画家でもあるloundrawさん。過去に、同著者である住野よるさんの本の表紙を2度手がけている方です。ファンとしては、またもやloundrawさんが素敵な表紙を飾ってくれて嬉しい限り。せっかくなので過去2作とよるのばけものを並べてみましょう。
こうして見ると、今回のはちょっと異色な感じがしますね。うまく言葉で表現できませんが……雰囲気がなんか違う。
帯を外してシンプルに
ネタバレを避けたためか、帯にある文言は宣伝とあらすじの一部だけ。黄色の文字が目立っており、帯があることで本全体が引き締まったような印象を持ちましたが取り外してみました。
いかがでしょう。
個人的には帯なしの方が好き。この表紙には仰々しい言葉や宣伝文句などは不要な気がしたので、シンプルな方が似合っているのかなと。
内側のデザインもいいぞ
黒と白のデザインは表紙だけではありません。中身も合わせてデザインされていました。
黒のブックマーク(紐)って初めて見たかも! なんだかとっても新鮮!
ほかにも細かいところで凝っていたりするので、ぜひ手に取って確認してみてください! この本は電子書籍ではなく手元に置いておきたい1冊です。
ちなみに、本の装丁をしたのはbookwallさん。幅広いジャンルの本をデザインしている会社です。「小説推理」「怒り」「ドS刑事」「過ぎ去りし王国の城」などが有名でしょうか。手がけた作品を調べてみると、過去に読んだ本がたくさん出てきて驚きました。
ここまで表紙に対する想いが熱く、かなり長めの前置きとなりましたが、ここからは本の内容に移りたいと思います。
「よるのばけもの」のあらすじ
夜になると、僕は化け物になる。
これは冒頭の一文。
”僕”というのは主人公である安達のことを指す。
安達は文字通り、夜になると化け物になる。表紙にあるような、黒く禍々しい姿へと変化するのだ。化け物になった彼は眠る必要がないので、夜は外へと出かける。その日は宿題をロッカーに忘れたため、学校へと向かった。安達は化け物の姿で夜の学校を徘徊することになる。
誰とも鉢合わせすることなく、目的地である3年2組の教室へ。ドアを開け、教室に入り、ロッカーへと近づく。無事に宿題を回収できる……かと思いきや……。
「なにし、てんの?」
背後にいた女の子から声をかけられた。彼女はクラスメイトの矢野さつき。双方とも驚いた状態でありながら、彼女は続けてこういった。
「あっちー、くんだよ、ね」
あっちーとは安達の呼び名。クラスメイトにとって馴染みの呼び名である。
この日の出会いがきっかけとなり、安達は翌日以降も矢野さつきのいる夜の学校へと訪れることに。2人は昼休みならぬ夜休みを過ごすこととなります。
↓公式PVはこちら↓
本の内容を少しだけ紹介
ちょっとだけネタバレになるかもしれませんが、序盤の範囲で少しだけ内容を紹介します!
夜パート・昼パートの順に話が進む
安達が化物の姿になるのは夜だけ。
昼間は人間の姿を保っている。つまり、ふつうに学校へと通っている。
本書では、昼は人間として、夜は化物として生活するといった順にストーリーが進む。
テーマはいじめ
とあることがきっかけで、矢野さつきはクラスメイトからいじめられることとなる。安達はいじめに積極的に加担するわけではないが、自業自得と思い傍観していた。矢野から話しかけられたり、挨拶されても基本的には無視。昼間の2人に会話はない。
そんな2人が、夜、学校で遊んでいる。片方は昼とは違う、化物に姿を変えて。
安達は彼女に何を思うのか。彼女をいじめるクラスメイトのことをどう思っているのか。自分のことをどう思っているのか。学校で起こる事件を通して描かれる各キャラクターに注目です。
感想
怖いけど見てみたい、よるのばけもの
ばけものとは、なにかの比喩や概念なのかと思ってた。表紙に描かれている化け物を見たときも、誰かにとって化物のような存在であるということを表現したイラストなんだと思ってた。
でも違った。
裂けた口。6つの足。8個ある目玉。4本の尻尾。物語に登場するのは本物の化け物だった。しかしもとが人間であることが分かっており、穏やかな口調も変わらないので不思議と恐怖心はない。非現実的なことだけど、小説ということもあってすんなりと受け入れられた。
化け物は見た目のインパクトもすごいけど、身につけている能力もすごい。少年心をくすぐるというか、なかなか胸熱な能力を秘めている。正直、羨ましいと思ったところもある(笑) 具体的な内容については、本書を読んで確認してみてね。
住野よるさんの小説が好きなら読むべし!
いじめというありふれた題材だけれど、随所に住野よるさんらしさが出ている。セリフの一言一言を読んでいるだけで実感した。
特に「名前で呼ぶ派? それともあだ名派?」と聞かれ「名字派」と答えるところ。「ファイア派? メラ派?」と聞かれ「インセンディオ派」と答えるところ。初めて読んだ文章なのに、なぜだか懐かしい気持ちに。ほんと不思議だ。
また、気づいている人も多いかと思いますが、今作のヒロインの名は「さつき」である。前々作の「桜良」、前作の「菜ノ花」に引き続き花の名前でした。こういったファンサービスレベルの繋がりを感じられるところがあるので、住野よるさんの本を読んだことがある人は是非手に取ってみてはいかがでしょうか。探すの楽しいですよ。
もちろん、過去作を読んだことがなくても十分に楽しめると思います。この本単体で独立している世界感なので、表紙やあらすじが気になった方は是非読んでみてください!
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ここから先の感想や考察はネタバレを含みます。僕個人の勝手な妄想話もあるので、大丈夫という方だけ次のページへとお進みください。