住野よる「よるのばけもの」感想と考察:謎は残るが感動再び!

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ここから先は本書を読んでから進むことをおすすめします。

感想・考察(ネタバレ含む)

昼は俺、夜は僕

安達の一人称は昼と夜で異なる。
昼は自分のことを俺。夜は僕と呼んでいた。

同じ男なので、この使い分けはよく分かる。先輩・年上の方には僕と言うことが多いが、友達と喋ってる時は俺って言うことのほうが多いから。

安達の使い分けはどうなんだろう。客観的に見ていると、クラスメイトとの関係を無理して取り繕っているときが俺。本音で喋っている時が僕、という印象を受けました。

徹底して昼と夜で一人称を変えなかったからこそ、ラストシーンはグッとくるものがありましたね。昼間だったのにも関わらず、安達のなかから”僕”が現れたんですから。かといって”俺”が消えたわけではありません。どちらもそこにいたんです。作中で「ホントの自分」という言葉が出てきますが、安達の中でどちらも受け入れることができたのかなーと朧げながらに思いました。

だからこそ、最後の一文に繋がったのかと。

スピンオフ、アナザーストーリーとかありそう

このお話は安達と矢野さつきのもの。
なので2人とクラスメイトの関係性に変化が生まれてちゃんと終わったんだけど、、、気になることたくさんあるよね! あるよね!? まずはお前だ、笠井!

笠井について

なんでも見透かしていた矢野さつきから

「彼は本当にうまい。頭もいい」

と評価されている。
緑川双葉からは「悪い子」と言われていました。もしかして野球部の窓を割ったのは…笠井? 209ページに書かれていた矢野の意味深な発言も引っかかるんですよね。どういう意味だったんだろうか。

あと思ったのが、笠井は安達の夜の姿を把握していたんじゃないかということ。昼間に噂されていた化け物情報は、全て笠井の口から伝えられていました。元田と安達に情報を流し、どんな反応をしてどんな行動をするのか楽しんでいたのかもしれません。終盤で信用できない人間ということが分かったので 彼の全ての行動には裏があるんじゃないかと一々疑問に思ってしまいました。今でもモヤモヤしています。

緑川双葉と矢野さつき

続いて気になるのが緑川双葉
彼女はあまり言葉を発しず、話しかけられても「うん」と答えるのがほとんど。控えめな性格が特徴的です。

矢野の発言から、緑川と矢野は元々友達であったもよう。そして矢野がいじめられていることに対し責任を感じており、代わりに仕返しをしているんだとか。明言はして居ませんでしたが、十中八九間違いないのではないかと。ということは、中川ゆりこの上靴をボロボロにして中庭に捨てたのは緑川の仕業ってことになるのかな?

残された謎

  • 修復されていた蛍光灯
  • 開いていた鍵
  • 笠井と緑川の動向。

見落としている可能性はあるんだけど、謎な部分があって、いまいちスッキリしない読後感……。

この一連のストーリーを補完するような小説が出たら嬉しいな。紙の本じゃなくてもいいからサイドストーリーを読んでみたい。きっと語り手は安達でもなく矢野でもないだろうけど、世の中に出ることを切に願います。

小ネタ・おまけ

本編とは関係ないですが、「よるのばけもの」関連で気になったことを紹介!

本屋さんのポスターがかわいい

こちらはTSUTAYA笹川店によるツイート。
学校の机に書かれたようなデザインが可愛いですね! 手書きっぽい文字や丸みのある角。端の方には文房具まであります。細部にまでこだわった素敵なポスターですね! うちの近くの本屋さんにはなかったので、実物を見てみたかったなー。

表紙の色を反転してみた

白と黒の表紙が印象的だったので、色を反転したらどうなるんだろう?

気になったので、さくっと加工してみました!

 

yorunobakemono-21

おぉ……なかなか怖いですね……。。白が黒になり、黒は白になり、赤は水色になったことで、恐怖心が増したような気がします。変化の大きさに驚きました。


 

これから読み返して思ったことや、新たに分かったことがあれば随時更新していきます!