本物のホラー小説は心霊現象やオカルトではないのかもしれない。村田沙耶香さんの「タダイマトビラ」という本を読んでそう思いました。
過度なネタバレは避けて、タダイマトビラについて紹介したいと思います。
「タダイマトビラ」について
2012年3月に単行本が発売。
2016年10月に文庫本として発売されました。
著者は「コンビニ人間」で芥川賞を受賞した村田沙耶香さんです。
あらすじ
主人公は在原恵奈。
登場時は小学4年生。
その母親は作中でこのようなことを言っています。
産んだからって、どうして必ず愛さないといけないの?
対する恵奈も、母親に対してこんな発言をしていました。
たまたまお母さんから出てきただけじゃん。だからって無理にお母さんのことを好きになる必要ないでしょ。お母さんも、私たちがたまたま自分のお腹から出てきたからって、無理することないよ。そんなのって、気持ちわるいもん。
父親は頻繁に家を空け、弟は引きこもり気味。この物語では、そんな4人家族の日常や恵奈が大人になっていくところを描いています。
家族欲を満たすカゾクヨナニー
この物語で重要な行為となるカゾクヨナニー。それは、家族愛を満たすために行われるもの。
カゾクヨナニーをするのは恵奈で、必要なものは自室にあるカーテン。カーテンのことをニナオと名付け、部屋にこもってこっそり行っている。その詳細についての明言は避けますが、字面から察してほしいところ。小説ではその様子が鮮明に、色濃く描かれています。
「タダイマトビラ」の感想
ホラー小説並みに怖かった
恵奈がパフェを食べる描写があります。
怖いという感情とは程遠い、何気ない日常のワンシーン。…のはずだった。
子供の私には大きいパフェだったが、飲み込むたびに柔らかくて冷たいものが私の食道を撫でていった。
恵奈の感性すごい!というか、作者である村田沙耶香さんの表現がすごい!
上記の一文はまだまだ序の口。こんな感じの描写がたくさんあって、背筋が凍る思いを何度もしました! 小説を読んでこんなにも寒気を感じたのは、そうそうない。
ほかにも、「寄生虫が食い破って出てくる」とか、「なめくじの尻を舐めているような」等といった過激な表現がありました。一体なにを表現しているのかは、本書にてお確かめあれ。
ラストシーンに戦慄
もともと恵奈はおかしいところがあったけど、文庫本では191ページ目から更におかしくなる。母親のことを「在原芳子さん」とフルネームで呼ぶようになった。そして、そこから始まるラストシーン。恵奈の誕生日を自宅で祝うところから急展開。
2人と言うところを2匹と言い、父親をオス、母親をメス、声を鳴き声と表現した。もう、人間じゃない…。
タダイマトビラの結末がどうなったのか。謎が多く、意味がわからないところもあったけど、戦慄するような結末だったことは確か。
おわりに
この本を読んでからというものの、「カーテン」という単語を聞くだけで目を細めてしまう自分がいます。。。
怖くて意味がわからないところもあったけど、総じて面白かった。今まで読んだことのないような内容を楽しめたので、ますます村田沙耶香さんの作る世界が好きになりました。コンビニ人間、殺人出産、タダイマトビラを読んだので、次はなにを読もうかな!