2012年に発売された入間人間さんの「たったひとつの、ねがい。」という小説。
僕が読んでから約3年という月日が経過していますが、読後感が最悪で良くも悪くもいまだに心に残っている作品。感想を交え紹介したいと思います。
※多少のネタバレを含むのでお気をつけください
表紙の印象と真逆の内容
こちらが「たったひとつの、ねがい」の表紙。
目の前にいる女性はカレーを食べて微笑んでいる。これを見て、どんな印象を抱きますか?
イラストを見る限り、ほんわかしたラブストーリーなのかなーと連想するかもしれませんが、そんなことはないです。
たしかに、結婚を視野に入れているカップルの何気ない日常を描いているのだけれど・・・・・物語の序盤、わずか28ページ目から急展開。
カップルは拉致され、4人の男に彼女を食べられることになる。
「食べられる」という言葉に色々と想像するかもしれませんが、文字通りの意味なんです。「ご飯を食べる」と全く同じ使い方であり、特別な比喩表現ではありません。
彼氏の方は運良く生き残ったけど、車椅子での生活を強いられることに。ここからどんな話になるのかというと、彼女を食った4人への復讐劇が始まります。
感想
入間人間さんのグロテスクな表現
とにかくグロテスク!
人を食べるシーンはもちろん、復讐するところも細かく描かれているので残酷な描写が多い。苦手な人は気をつけたほうがいいと思う。
著者の入間人間さんは、電撃文庫でのライトノベル、恋愛ミステリー、日常系の和む話を書いている印象が強かっただけに、グロテスクな内容にはかなり驚いた。この人、こんな作品も書くのか…と。
復讐劇にちょっとした爽快感
彼氏は4人の犯人に、次々と手を下していく。目を背けたくなるような内容だったけど、彼氏側は被害者ということもあり、読者としては応援する気持ちで読んでいた。
勢いのある文章は読みやすく、ノリノリなところも。特に、足を動かすことができない車椅子という不自由な環境の中、復讐をしていくところは読み応えがあった。
不謹慎かもしれないけど爽快感もあり、アクションゲームを攻略する感覚に近い体験だった。
本当に胸糞悪いのは終盤
復讐を成し遂げただけでは終わらない。
彼女を食われるという絶望的な出来事に加え、物語の終盤、さらに胸糞悪いと思うようなことが発覚する。
227ページの、
「○○○○○○、思っていたのに」
ここで僕は言葉を失った…。
本の帯には「この物語に、同情の余地なんかない。」という言葉があったが、まさにその通りだった。
今まで彼氏を応援していただけに、余計にそう思う…。これ以上はネタバレになるので控えるけど、衝撃的な結末だったことだけは事実。
おわりに
良いも悪いも含みますが「たったひとつの、ねがい」の読後感は最悪。しかし、勢いがあって目が話せないような内容だったことに間違いはなく、面白いことは面白い。
胸糞悪い気持ちになるけど、おすすめの一冊。たまには一風変わった小説を読んでみてはいかがでしょうか。