哲学の入門書にうってつけ!「ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。」

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こんにちは、ニシマツ(@output_log)です。

ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。」という本を読みました。

出版しているのはダイヤモンド社です。ダイヤモンド社といえば、ビジネス書の第一線で活躍している出版社のイメージ。有名なタイトルとして「嫌われる勇気」「やり抜く力」「もしドラ」など、聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。

僕はふだん小説ばかり読んでいるためあまり買わない分野の本ですが、表紙やタイトル、クチコミをきっかけに購入。読んだことで学んだこともあるので、感想を交えながら紹介したいと思います。

※「ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。」という31文字にも及ぶタイトルが長いので、記事内においては「ニーチェ京都」と省略させていただきます。

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著者は原田まりるさん

著者である原田まりるさんは、作家・コラムニストであり哲学ナビゲーターと名乗っています。

元々は男装アイドルとして活躍していたという珍しい経歴の持ち主。失礼ながら存じ上げなかったのですが、この本を機に原田まりるさんのことを知りました。

どんな内容?

ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。

漫画のようなイラストの表紙。ライトノベルのようなタイトル。そこから連想するのは一体どんな内容でしょうか。

その中身とは、小説です。ダイヤモンド社から出版されているからといって、お堅いビジネス書というわけではありません。

帯には哲学エンターテインメント小説と書かれていました。全くもってその通り。読んだ上で帯の文言に激しく共感しました。

どんな小説なのかというと、タイトルそのまんま(笑) ニーチェが京都にやってきて、17歳の女子高生に哲学のことを教える物語。続けて詳しく紹介しますね。

小説のあらすじ

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17歳の女子高生、児嶋アリサ
彼女には好きな人がいる。正式な交際宣言があったわけではないが、大学生の彼とはデートを楽しむ間柄だった。

ところが、1か月ほど前から彼との連絡が途絶えていた。そんな中、学園祭に遊びに来ていた彼を目撃。その隣には部活でお世話になった由美子先輩の姿が…。2人は仲良さそうに腕を組んで歩いていたのであった。

失恋をきっかけに自己嫌悪に陥っていたアリサ。何のやる気も起きずツイッターを眺めていると、とあるツイートが目に飛び込んでくる。

「祝福できないならば呪うことを学べ」

ニーチェの言葉だった。
このことがきっかけとなり、アリサは縁切り神社として有名な安井金毘羅宮を訪れる。彼との未練を断ち切ろうと考えたからだ。

無事にお祈りを終えたアリサはアルバイトへと向かう。そしてひと仕事終えた帰り道、一人の男が目の前に立ちはだかり、こう言った。

 

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「私はニーチェだ。お前に会いに来てやった」

哲学のことを何も知らなかったアリサはニーチェとの出会いをきっかけに様々なことを学び、気づき、理解を深めていくこととなる。

ニーチェだけじゃない。キルケゴールやハイデガーも

この小説に登場する哲学者はニーチェだけではありません。ほかにも様々な哲学者がユニークなキャラクターとして登場します。

 

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例えばデンマークの哲学者、セーレン・キルケゴール。美学を追求した彼は、現世においてミステリアスな美男子として現れます。

あまり詳しくないのですが、読み終えたあとに哲学者のことを調べてみると、各キャラクターのイメージにぴったり合っていました。性格だけではなく、ビジュアル面もです。所々に挿絵があるので必見。

ニーチェ京都で登場する哲学者は全部で6人。

  • フリードリヒ・ニーチェ
  • セーレン・キルケゴール
  • アルトゥル・ショーペンハウアー
  • ジャン=ポール・サルトル
  • マルティン・ハイデガー
  • カール・ヤスパース

喫茶店のマスターをしていたり、大学教授をしていたり。各キャラクターが現世で何をしているのかにも注目してみてください。

ちなみに、哲学者ではありませんが、ニーチェの友人であるリヒャルト・ワーグナーも登場します。

感想:哲学初心者でも読みやかった

哲学について研究しているとか、夢中になっているとかではない初心者の僕ですが、最後まで行き詰まることなく読めました。

主人公アリサが哲学初心者という設定なので、自分のことのように読めていたんだと思います。ニーチェの言葉で疑問に思ったことを、アリサが代わりに質問してくれた、ということもありました。

難しいところもさほどなく読みやすい。京都、西野カナ、ライザップ、天下一品、エヴァンゲリオンといった日常にある話題や時事ネタもあり、親近感も湧きました。

もしかすると哲学に熱心な方にとっては物足りない内容なのかもしれませんが、初心者にとっては入門書としていいんじゃないかと思います。小説を楽しみながら、哲学者や考え方について学ぶことができるので。

哲学に興味はあるけどとっつきにくいし、何の本を読んだらいいかわからなくて悩んでいる、という人は最初の1冊にいかがでしょうか。

小説を読んで浴びる名言のシャワー

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ニーチェをはじめとする哲学者のセリフには名言といえるものがたくさん。小説を読んでいて思わず唸るものがいくつかあったので、個人的に気になった言葉をご紹介。

習慣的に周囲に合わせていると、自分で考える能力を徐々に衰えさせてしまう(p28)

 

周りからどう言われようとも、媚びず! 退かず! 省みず! 自己の価値に誇りを持つのだ(p71)

 

何かに迷ったときは、自分に問いただせばいい。”いま自分は、楽な道を選びたくて迷っているのか。それとも、喜びある道を選びたくて迷っているのか”(p104)

 

ポジティブでいなければいけない! という気持ちが、脅迫概念となってしまうと、それはもうポジティブではなくなる。ただ、自分の気持ちを無視しているだけにすぎない(p149)

 

人生は後ろを向くことでしか理解できないが、前にしか進めない(p150)

 

すでにあるものを鵜呑みにするのではなく、疑いを持ち、自分なりに考えてみる。それが哲学するということだ(p189)

 

人は一貫性を求めますが、本来一貫性がないのが人間です(p297)

次から次へと気になるセリフが出てきます。特に物語後半の勢いがすごい! 会話というよりは演説を聞いているみたいな感じで、力強く訴えかけているようでした。とにかく心に響くんです。まるで名言のシャワーを浴びているかのよう

本当のところは、まだまだたくさんありますが、長くなるのでいったんここまでにしておきます。

おわりに

ニーチェ京都は物語を通して哲学に触れることができる本。エンタメ性があって面白く、哲学に関する知識も得られる内容となっています。興味がある方は是非読んでみてください!

今はまだメディアミックスの情報はないですが、近いうちに漫画化されそうだなって思いました。そしてゆくゆくは映像化もされるんじゃないかと踏んでおります。(個人的な意見)