芥川賞の候補作となった「ジニのパズル」
受賞することはできなかったですが、帯の「素晴らしい才能がドラゴンのように出現した!」というフレーズに興味が湧き読み始める。
期待値が高かっただけに、冒頭はちょっと退屈…。まぶたが重くて中々読み進められなかったのですが、50ページを越えたあたりで一気に引き込まれる文章に出会う。それがこちら。
自分の傷を言い訳に、よりによって最も大切な人たちを、傷付け、騙し、欺き、追いやり、日の当たらぬ闇の底へーー自ら這いつくばって抜け出すしかない奥底まで突き落とした人間。
それが私だ。
これは、そんな私の物語なのだ。
このあと、どんな展開が待っているのだろうか。ゾクゾクして一気に目が覚めた…! 読み終えた結果面白かったので、ジニのパズルがどんな内容なのか感想を交え紹介します。
著者は崔実さん
ジニのパズルの著者は崔実さん。読み方は「チェシル」。本作がデビュー作となる。
1985年生まれ。東京都在住。インタビュー記事でお顔を拝見しましたが、モデルさんみたいに綺麗な人でした。
ジニのパズル あらすじ
オレゴン州の高校に通う女の子「ジニ」。ホームステイ先でステファニーと出会ったことで、5年前の東京での出来事を告白し始める。
ジニは日本の小学校に通った後、中学から朝鮮学校に通うことになった。朝鮮語を話すことも聞くこともできないジニは、なかなか居場所を見つけられない。生活していて特に納得がいかないのは、教室で自分たちを見下ろす金親子の肖像画だった。
この過去の話は1998年。北朝鮮から弾道ミサイル「テポドン」が発射された年でもある。
ジニのパズル 感想
作中に出てくるキーワード
- 北朝鮮
- 朝鮮学校
- 在日
この言葉を聞くだけでちょっと身構えてしまうのは気のせいだろうか。僕の場合はニュースを通して知ることが多く、ふだんの生活からは程遠い。
こういったデリケートで扱いづらいと感じてしまうようなテーマの小説は初めて読んだので、とても新鮮。学校を舞台にした話では定番の「いじめ」「登校拒否」といった出来事も、いつもと違うことのように読むことができた。
全体的に重い話なんだけど、ちゃんと救いもあるの安心してください。
それは180ページから始まるステファニーとの星の話。ジニは救われた気持ちになったし、読者である僕の気持ちも晴れた。
ものすごく簡単に紹介するとこんな感じ。
星は宇宙のゴミ。
私は社会のゴミ。
ゴミでも輝くことはできる。
輝くためには努力するしかない。逃げてはいけない。
星の話はたった6ページなんだけど、ものすごくいい内容で温かい気持ちになることができる。是非とも全文を本で確認してほしい。おすすめの一冊です。