福音館書店から出版された、まく子 を読みました。
著者は西加奈子さん。
装画と挿絵も担当されています。
読んだきっかけ
実は西加奈子さんの本を読むのは初めて。
又吉さんが「漁港の肉子ちゃん」をおすすめしていたことや、「サラバ!」が直木賞を受賞していたりと話題になっていて、ずっと気になっていたんです。
その2作品の著者である西加奈子さんが、直木賞受賞後の第一作となる新刊を発売したと聞いて、「これだ!」と思い買って読んでみることにしました。
あらすじ
小さな温泉街に住んでる小学生の南雲 慧(なぐも さとし)。
成長による身体的な変化に怖れて、大人になりたくないと思うような子ども。親は「あかつき館」という温泉宿を経営している。
その「あかつき館」に突然やってきたコズエ。
細い足、すっと伸びた背中が美しく、中学生モデルにも負けないような美人。可愛いというより、綺麗という言葉が似合う、学校ではアイドル的な存在。
だけど、ちょっとおかしな行動をする不思議な子。彼女には秘密があった。
コズエの母親が温泉宿で働くことになり、慧の家の隣にある従業員専用の寮、「いろは荘」に住むことになる。
慧とコズエのボーイ・ミーツ・ガールから始まる物語。
まく子の意味
読む前から気になっていた本書のタイトル「まく子」とは。
コズエは、石粒や運動場の砂、水道の水、木の実、消ゴムのカスなどを、まくことが好き。とにかく楽しいから。
どうやら、まき散らす子 から まく子 とつけられているようです。
「まく」と言われると、想像がし辛いかもしれませんが、お相撲さんの塩まきみたいなものだと思います。なぜ「まくこと」が楽しいかは、本書で明らかになっています。
感想
コズエの秘密が衝撃的
70ページを越えたあたりでコズエの秘密を知ることになります。
その内容があまりにも突飛。僕の口はポカーンと開き、頭の中は「?」でいっぱい。
青春小説だと思っていたら、ファンタジー? いやいや、SF小説?。
「そうくるかー!」と思い唖然とした…!
ストレートな表現に驚き
西加奈子さんの本を読むことが初めてだったので、ストレートな表現に驚きを隠せません…。テレビで流れたら確実に「ピー」という音で遮られるであろう言葉。こんなにもストレートに書いて大丈夫でしょうか…。
年頃の女の子には刺激が強いんじゃないかなーと思った。
これが西加奈子さんの作風なのか気になるところ。ぜひほかの本も読んで確かめてみよう。
終盤の展開に感動した…!
ぼくはみんなだ。
ぼくはぼくでしかなくて、そして同時に、みんなでもあるのだ。
ネタバレになるので詳細は省きますが、意味が分かると感動した!
そして次の言葉が胸にささった。
あの人はぼくだったかもしれないと、想像する勇気を持たないといけない。誰かを傷つけたら、それはほとんどぼくを傷つけているのと同じことだ。
ダ・ヴィンチ2016・4月号の特集では、西加奈子さんが普段考えていることが一気に出たとも言っています。もはや、この本を通して西加奈子さんが読者に語りかけているような、そんな気さえします。
まとめ
僕が初めて読んだ、西加奈子さんの本でした。
読み終わって思うこと。
なんだか、とんでもない本を読んでしまった。
読んだあとも様々なことを考えてしまう。なんだか、溜息がよく出るんです。うまく言葉にできないのがもどかしい。。
西加奈子さんはダ・ヴィンチ2016・4月号の特集でこんな発言をしています。
かつて子どもだった大人のほうが楽しめる、びっくりできる小説になったと思います。
おそらく、読者ターゲットとして、どストライクだったのかと。
共感するところも多かったし。
「まく子」の始まりはいたって普通のボーイ・ミーツ・ガール。
だけどファンタジー要素あり、SF要素あり、西加奈子さんのエッセイでもある内容でした。
大人にこそ読んで欲しい1冊。
西加奈子さんが好きな人はもちろん、今まで読んだことがない人にも、おすすめ!
それでは、また。